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『プラータナー』の変遷

2015年に最初の出会いを果たしたウティット・ヘーマムーンと岡田利規。わたしたちの生きる現代を鋭い視点で観察し、作品を創作してきた同世代の二人の鬼才が、『プラータナー:憑依のポートレート』創作への第一歩を踏み出したのは、出会いから1年ほどを経た2016年11月。それから対話を重ね、さらに塚原悠也が加わったことで、本作のコンセプトは大きく展開した。

2016.11月

バンコクでのリサーチ+ヘーマムーンと岡田による公開対談
クリエーションの第一歩としてまず岡田がバンコクへ!ヘーマムーンが当時執筆中だった本作の原作となった小説の構想を岡田が聞き、そのコンセプトに強く共感したことから『プラータナー:憑依のポートレート』が始まった。バンコク市内のさまざまな場所をヘーマムーンのガイドにより訪れるなどのリサーチのほか、二人による公開対談も行った。同月にタイ語で出版された岡田の小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』の話題をスタートに、互いの創作についての対話が交わされた。

2017.3月

バンコクとチェンマイでのリサーチ+俳優ワークショップ
岡田がタイを再訪。チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』バンコク公演を行った後、リサーチとしてヘーマムーンの原作小説に登場するバンコク市内の場所や、公演会場の候補地を訪問。バンコク、チェンマイの両地において、現地で活動するアーティストや研究者、インフルエンサーなど、さまざまな人物からタイの歴史や社会状況について話を聞き、舞台化するにあたってのコンセプトづくりを深めていった。さらに、「Bangkok Art and Culture Centre」、劇団「B-Floor Theatre」、「Democrazy Theatre」の協力を得て、俳優ワークショップを開催。岡田の演劇に対する考え方について、現地の俳優とシェアする機会となった。

2017.4月

出演者、演出助手、制作助手のオーディション+リサーチ
再び岡田がバンコクへ。出演者、演出助手、制作助手のオーディションを、6日間にわたりバンコクで開催。オーディションを経て11名の出演者のほか、演出助手と制作助手各1名ずつを選出!また、現地の衣装家に時代背景とファッションの関係性についての話を聞いたり、バンコクでの上演会場候補地も視察した。

2017.6月

ヘーマムーンとタイのクリエーションチーム来日
バンコクでのオーディションの2ヶ月後、ヘーマムーンとタイのクリエーションチームが来日!岡田も出席して国際交流基金アジアセンター(東京)でプレス向けのアーティスト・トークを開催。滞在中は、岡田とヘーマムーン、タイのクリエーション・チームらが盛んに作品の構想や演出アイデアについての意見を交わした。

2017.9月

バンコクでのリハーサル
再び舞台はタイに戻る。バンコクでのオーディションで選出した出演者と共に、10日間にわたる第一段階のリハーサルを実施。同時期にバンコクのARTIST+RUN GALLERYで開催されていたヘーマムーンの絵画展「Silhouette of Desire」内でのリハーサルも実施。展覧会は原作小説と並行した企画内容で、作品イメージの共有がより深まる機会となった。

2018.1月

熊本での脚本推敲打合せ
演出助手のウィチャヤ・アータマート、原作翻訳の福冨渉、翻訳協力のマッタナー・チャトゥラセンパイロートが来日。岡田とプロデューサーの中村茜、制作スタッフが参加し、当時岡田が執筆中だった脚本の推敲打合せを行った。タイ語と日本語両言語のニュアンスのすり合わせや上演にあたっての演出イメージを議論しながら、脚本の完成へとつなげる打合せとなった。

2018.4月

熊本でのコンセプト打合せ
岡田、塚原が熊本にて作品コンセプトの打合せを行った。塚原の構想が語られ、空間、美術のデザインのみならず、時間の中での美術の移動とそれに伴う俳優やクリエーションチームの動きを含めたデザインについて共有した。

2018.6月〜8月

バンコクでのリハーサル+世界初演!
岡田、塚原をはじめ日本から参加するクリエーションチームがバンコクに滞在し、出演者、タイのクリエーションチームと共に、上演に向けてのリハーサルを行った。そして、2018年8月22日、チュラロンコーン大学文学部演劇学科 ソッサイパントゥムコーモン劇場にて世界初演を迎えた。

2018.12月

パリでヨーロッパ初演!
フェスティバル・ドートンヌ・パリ/ジャポニスム2018公式企画として、パリのポンピドゥ・センターにてヨーロッパ初演を迎えた。